乱世を生きる市場原理は嘘かもしれない


今日は橋本治さんの新書。


乱世を生きる市場原理は嘘かもしれない, 集英社新書, 2005


橋本治さんはたぶん僕が知っている中で、
もっとも文章のうまい人の1人。こんな文章かけるようになればいいな。
とにかく、話のレゾリューションが高い。
なんなんだこの変質的な掘り下げ方は?
洋服のほつれた糸引っ張ったら全部服がバラバラになっちゃったというような、
あれよあれよと言う間に、バラバラにしちゃうんですよ、ほんとすごい。


エポケーの達人。なんでもなことでも大変なことにしてしまう。
大変な問題を見つけ出してしまう。
そして、読み終わったとの煙に巻かれた感はどうだ。
僕は全く理解していなような気もするし、なんだか大変な本を読んだような気もする。

 私が言いたいのは、どこでどうなっているのかよく分からない「世界のあり方」なんてものを勝手にシミュレイトして、それに自分をあわせようとしたって、合うかどうかかなんか分かんないじゃないか、ということです。
 自分が「世界の中で」生きているんならーそのことを明確に自覚していたら、「世界」だって「合わせてやろう」と言って向こうからやって来るかもしれないという、そんなことだけです。「世界」という、よく分からない遠くの現実に合わせるより、自分の生きている現実との調和関係を維持構築することのほうがずっと重要で、そういうことをしていなかったら、遠くの「世界」が「こんにちは」と言ってやって来たって、どうしたらいいか分からないままでしょう。
 自分の生きている現実との調和関係が維持構築出来ていて、そんな自分が「世界」に必要とされるなら、その時は、自分の現実がほんのちょっと広がるだけで、「遠い世界も、小さな自分の現実も、現実になってしまえば違いはないな」と思うだけです。

p75-76